Ceramics Chroniclesは、日本をベースとして陶芸シーンに起こった様々な事象を綴るパーソナルアーカイブスを目指しています。


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やきもの紀行(旧ぐい呑み旅)

そのニ 東京千駄木団子坂      1986〜7年頃

古物屋

日本がバブルの真っ只中だった80年代半ば、その反動なのか江戸情緒を残した東京の谷中、根津、千駄木界隈、通称“谷根千“が静かなブームとなっていました。上野の美術館に行った帰り、わざわざ遠回りして東京藝大の裏道を散策する道すがら、下町レトロなカヤバ珈琲に立ち寄り一服、 山手線の内側とは思えない静かな佇まいの寺町を抜け、菊見煎餅、いせ辰を過ぎると千駄木団子坂下に行き当たります。護国寺方面への坂の登り口に古物屋を一軒見つけ立ち寄りました。店先に雑然と積まれた古物の中から今回の器を引き当てました。一つは青磁の小碗でその翡翠の様な少しグレーがかった深い釉調に目を引かれました。ぐい呑みというよりは茶器といった大きさで何に使われていたのか興味が尽きません。見立ての妙で酒に良し、茶に良し。

もう一つは九谷と銘の入った明治以降の盃ですが、白磁の上からデルフト様の乳白色の釉を掛け、その上に手書きと思われる呉須で、外に海浜風景、見込みに松と鳥が描かれています。その洒脱で景の大きな構図、濁った白の余白に濃い呉須のコントラストが気に入り、格安で良い買い物をしました。後年、再度立ち寄った際にはもう店の姿はありませんでした。江戸情緒を残した下町で何故か懐かしい風情を持った器と出会いました。

メモ
青磁

購入価格: 500円〜1000円
寸法(mm): 長径 78 x 短径 30 x 高さ52
箱.箱書き; 無
九谷
購入価格: 500円〜1000円
寸法(mm): 長径 63 x 短径 29 x 高さ32
箱.箱書き; 無


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