Ceramics Chroniclesは、日本をベースとして陶芸シーンに起こった様々な事象を綴るパーソナルアーカイブスを目指しています。


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やきもの紀行(旧ぐい呑み旅)

その四  日本民藝館     1988-90年頃

手仕事とインダストリアル・デザイン

今から30数年前、民藝にはまったく無知であったわたしは、民藝品と言えば、時代遅れの田舎じみた物という誤ったイメージを抱いていました。頃は正に文化爛熟するバブル絶頂期、知人を通じて柳宗悦の存在を知り、東京駒場の日本民藝館を訪ねました。そのタイムスリップした様な佇まいと、和韓洋折衷の斬新な美に圧倒されたのを覚えています。その後、民藝の巨匠達の作品や作陶の地、彼らの薫陶を受けた民窯を訪ね歩きました。また、中学の頃より興味を持っていた“バウハウス”の源流である“アーツ&クラフト運動“と”民藝“の符合にも関心を寄せるようになっていました。

産業革命による粗悪品の大量機械生産と創造性の衰弱によって、善良な手仕事が駆逐されて行くのを看過できないジョン・ラスキン、ウイリアム・モリスや柳等白樺派の人たちは、“分断されてしまった生産と芸術”、“有用性の美”を復興するための運動を推進します。しかし、「手間暇かかる彼らの工藝品は高価なものとなり、結局、旧態通りブルジョワジーの生活を飾り、“民衆の生活に寄り添う美“とはなりませんでした」。モリスは後半生を社会主義運動に身を転じたほどです。アールヌーボー、アールデコ、モダンデザインと様々な変遷を経て、後進のインダストリアルデザイナー達によってその目的は実現されて行きます。

日本に於いても柳宗悦の子息、宗理氏がその目的を推進して行くことになります。現在も無印良品などで知られるプロダクトデザイナー深澤直人氏(元日本民藝館館長)や、D&DEPARTMENTのナガオカケンメイ氏、ファッションブランドbeams等々が代表格としてその精神受け継いでいると思います。

今回のぐい呑みは、最初に日本民藝館を訪れた際、ミュージアムショップで買い求めた柳宗理氏デザインの「ぐい呑み 丸紋 酒器 冷酒(1988)」です。様々な酒器と出会ってきましたが、今でも日本酒自体の滋味を楽しみたい時、自然と手に取る、出番の多いぐい呑みです。冷酒故かワイングラス様のステムが付き、馬上杯をも想起させる和洋融合のGOOD DESIGNです。

メモ

購入価格: 2000円〜3000円
寸法(mm): 長径 65 x  短径 40  x 高さ 75
箱.箱書き; 無


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