Ceramics Chroniclesは、日本をベースとして陶芸シーンに起こった様々な事象を綴るパーソナルアーカイブスを目指しています。


Blogs


クロニクル1

珠洲焼

Suzu ware in expo osaka 2025

(注記)画像は珠洲焼ホームページに確認の上、転載したものです。

クロニクルといってもつい先日のことです。7月初旬、大阪万博を訪れました。
もちろん、あの70年以来の大阪万博ですからお目当てのエキジビションも多かったのですが、目を引いたのがEXPOメッセWASSEで開催中の「第3回日本国際芸術祭/大阪・関西万博展」に出展中の珠洲焼(SUZUWARE)ブースでした。

今から30年近く前、越前焼の旅の終わりに訪れた「石川県立美術館(金沢)」で出会った珠洲焼の壺に強い関心を抱きました。それまでに出会った平安~室町期六古窯(瀬戸、常滑、越前、信楽、備前、丹波)の焼き締め壺とは異なった特徴を感じたからでした。
地肌全体がセメント状の灰褐色を呈し、表面がざらついた粗々しくうぶなテクスチャを有していました。調べると研究資料は少なく、須恵器系統の還元焼成のやきものであり、平安末期に起こり室町後期に急な廃絶をとげた。その後500年の時を経て石川県の助成もあり、1970年代に数名の陶芸家により現代に復興を遂げたというくらいの情報でした。現代まで変遷はありながらも脈々と続いて来た六古窯とは異なり、謎多き平安の藤原陶と同様、世の衆目を浴びることはなかったようです。

しかしながら、今日までその異質かつ現代美術にも通底するテクスチャを持ったやきものへの関心は私の脳裏に宿ったままでいました。現地を訪れるチャンスを伺っていた矢先にコロナが蔓延し、その後の能登半島地震、豪雨被害、珠洲焼復興を危惧していた矢先、万博での嬉しい出会いでした。

万博会場に詰められていた珠洲焼関係者が若い方々だったことに先ず驚きました。復興第2世代とのこと。現在、「珠洲市陶芸センター」が設立され後継者育成の結果、約40人近い陶芸家がおられ、復興にあたられているとのこと。いくつかはようやく窯炊きを再開できるまでに漕ぎつけられつつあるとのこと。苦境にありながらも明るく、前向きな姿勢に強く感銘をうけました。珠洲の若き陶芸家の立ち位置と珠洲焼への向き合い方を認識するとともに、その未来への展望に意を強くするものでした。

お話によると現在の珠洲焼は黒色を呈したものが主流のようです。採土地により差が出るとのことでした。焼き締め黒陶が特色である窯業地も珍しいことですから、テクスチャの現代性も相俟って珠洲焼の将来を見据えた方向性が腑に落ちた次第です。

詳しくは珠洲焼のホームページリンクから”知る”・”見る”・”買う”・”訪れる”・”体験する”・”作家紹介”などご確認ください。

https://suzuware.info/

年内、あちこちと窯出しの報が届いたら是非訪ねたい珠洲焼の地です。


PAGE TOP